『武井武雄のこけし』より。
弥治郎系こけし工人・本田鶴松(明治18年~昭和27年、享年68歳)のこけし。
「群雄割拠の弥治郎系中確かに一異彩たるを失わぬものです」と「こけし通信」に書かれているように、この異彩を放つ独特な眼力に惹きつけられられたようです。「弥治郎系の特質を完全に出しつつなお小原を存在させ得ている効果は巧まずして興味のあるもので、弥治郎分派中拾うべき佳作」(日本郷土玩具)と早くから高い評価をしていました。瞼が太く描かれた目、じっと見つめていたくなるような表情です。
※ 本田鶴松こけしは、目と胴模様は鶴松の創案であるが、胴のくびれは中国服に似せて作ったといわれている。可愛いい明朗な表情であるが、中には剛直な情味もあって鶴松の一面の性格を物語るものである。
本田鶴松の二男・本田亀寿(大正8年~平成2年、享年71歳)は「小原温泉にいた異色の名工、本田鶴松」と言われた父に18歳のときより修業。父鶴松に似た中国美人のようなこけしをつくって、各賞を多数受賞したのです。