「七福神」と「マトリョーシカ」 高橋五郎著 より。
戦後になり、伝統こけしのブームが再来するが、生活様式の変化も伴って、以前、盆・椀類などの生活用品や玩具を製作した殆どの木地屋はこけし専業となり、わずかにつくられる木地玩具も独楽や数種類のものを残すぐらいとなってしまった。当時、かつて腕に覚えのあった木地屋は、「木地屋の技術の本領は木を削ってこそにあり、現在の様にこけしなど表面しか挽けないというのは木地屋とは言えない」と木地技術の衰退を憂い、淋しそうに昔を振り返っていた。
あれほど隆盛を誇ったこけしブームが去って久しいが、近年、現在の生活スタイルに沿った新しい感覚でこけしを愛好する人たちが登場し、こけし界に明るい兆しが見え始めた。つづく。