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Channel: こけしおばちゃん
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こけし置物

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 「こけし置物」矢田正生 著より。
 ここまで「こけし像巡り」深瀬 秀氏の各地のこけし像を紹介されたが、いずれも像というに相応しい大層なものばかりであるが、我が家にも小さいながら玄関にこけしの形をした置物がある。今回の深瀬氏に関して、こんなものもあるということで紹介させて頂く。
 大きさは1メートル余の陶製である。こけしに関した表札代わりのものが欲しくて思いついたのがこれである。顔、模様は描かれたものではなく彫られているのが特徴である。置物としての安定感、形の変化を考えて鳴子型に決め、高橋正吾さんのこけしをモデルとした。
 作者はヘラひとつで寺院などの鬼瓦を作り上げてゆく鬼瓦の職人である。いわゆる陶器の職人では、大物を作っている人でも、こういった形の作りは出来ないし、まして顔や模様の彫りは絶対出来ない。これもヘラひとつで彫り込んでゆくのである。七寸の正吾こけしを見ながら、その大きさに作って行く様は圧感であったが、形は一日では出来ない。土の重みでつぶれないよう適度の乾燥をさせながら積み上げてゆくが、乾き過ぎると彫りが出来ないので、その兼ね合いが難しいところである。できるだけ大きなものをということで、土も鬼瓦用の土にシャモットを入れて強度を増しているが、高さはこれくらいが限度だろうといいながら窯入れの時はきつくならなければよいがと案じていた。
 乾燥に四ヶ月かけ、頭頂に炎のぬける穴をあけてあるが、それでも後頭部のところで亀裂が出来て修正せれている。陶器関係の仕事に従事していて、しかもたまたま鬼瓦の職人を知っていたから出来たものであるが、今思うとよくこんな無理を言ったものと思う。我が家を訪れる方は必ずといっていい程、まず話題にしてくれる。その度に作者に感謝している次第である。
 「こけし手帖」昭和59年9月号より。
 ※ 驚きました。こけしフアンの私に度々お便りやニュースなどのチラシやカレンダーなどを送ってくださっていた矢田正生様の原稿でした。矢田様は、名古屋こけし会の重鎮の方なのです。恐れ入りました。

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