昭和61年1月号発行「こけし手帖」。小川一雄氏 記より。
こけしの定寸ということがいわれ四寸から七.八寸、大きくても一尺位までのこけしが工人も作りなれており、出来がよいことが多いといわれています。大きさについていえば、こけしが子供の相手をしていた時代は確かにそうだったでしょう。作り慣れていれば、それ以外の寸法のものより出来がよい場合が多かったでしょう。
ところが、こけしの需要は定寸に限らないこということについて少し書いてみたいと思います。現存する著名なコレクションを拝見してみても、二尺以上の大寸物から一寸以下の豆こけしまであり、子供の手を離れたこけしは愛好家の注文によって、可能な限りの大きさが追求されてきたように思います。
大寸物のボリュームに圧倒され、豆こけしなどの手の込んだ可愛さに惹かれたりして、昔から定寸物だけを蒐集している愛好家は極めて稀といえるでしょう。
私も同様に最近は小寸こけし、豆こけしに重点を置いた蒐集をやっています。
便宜上、四寸以下のこけしを次の三つに分類しています。
㈠、は小寸こけし。これは四寸前後の遠刈田でいえばこげす、鳴子のたちこなど普通の大きさのこけしとは形状が異なり、描彩も簡潔なもの。定寸物のなかの小寸。㈡、は二寸以上四寸位のこけしで、普通ののこけしのミニチュア。㈢、は二寸以下の豆こけし。
私は、小寸こけしには、まずフォルムの良さを求めます。同じ工人のものでも案外作られた時期によってフォルムの変化があります。また簡潔な描彩の中に筆力、思いがけない味わいを感じることがあります。豆こけしの愛らしさはいうに及ばないでしょう。
これらの小寸こけし・豆こけしを時には虫眼鏡でみることによって、神経質でないさりげない面相、木肌ににじんだ胴模様などを楽しんでいます。また、手ごろな数量を笊に入れて身近かに置いたりもしています。
昨年から頒布プロジェクトチームでは、二寸のこけしと豆えじこを新進の工人にお願いするなどして好評を得ていますが、この企画は今年も続けられるものと思います。工人の方々のご協力をお願いします。
私達に必要なことは、工人に余り無理をお願いしないこと。でも、長い間心掛けていれば、かなり集まってきます。以上。