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Channel: こけしおばちゃん
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娘(こけし)をお嫁に出す心理

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 こけしを人にあげる、漠然とあげるのではなく何らかの意図目的共鳴等があってと思うが、何人(本)お嫁に出したのだろうか?譲ってほしい、大事にするから、気に入ったから、記念に、思い出に、娘のお土産に、その都度ごとに理由は、色々だが、こちらの気持ちと相手の態度次第であった様だ。関心を持ってくれれば、それが第一条件、そしてこけしを楽しんでもらえ、何かを感じてくれればそれで十分。こけしの行く末を考えてかどうかは不明だが、こんな気持ちになれば惜しみなくあげてしまっている。
 何本かの中より選んでもらったりすると、なまじっかこけしの知識を持っている人よりも、初めての人の方が純粋な良いこけしを選びもって行かれてしまう。自分の手元から離れて、冷静になって初めて公開したこともたびたびあったのだが、そうこうしているうちに、何十年かすぎてしまった。
 人には『お嫁に出しました』なんて格好つけた言い方をして、こけしとの別れを定義付けしていたわたしであったが、最近は「お嫁に出した」という言い回しをしなくなった。それは本当の娘を、嫁に出してから、一言も言わなくなった。いや言えなくなり禁句にさえなっているのだ。
 こけしを手入れしていて、眺めているとふと娘の顔と重複し、寂しさがこみ上げてきて、目頭が熱くなり、どうしようもないのである。
 これからもこけしをあげ続けるだろうがその時の感じ方は、少し違ってくるだろう。
 所詮こけしは趣味の範囲内なのであろうか?未だ趣味の段階から脱皮していないのだろうか。
 「嫁に出す」気楽に使っていた言葉であるが、言葉の意味が、こんなに重くのしかかって来るとは思わなかった。言葉にしてしまえば、同じ発音ではあるが、ニュアンスがあまりにも違う。違いすぎるのだ。
 こけしも奥が深いけれど、言葉(表現)の難しさと、意味の深さを痛感している次第である。以上。
 「こけし手帖」532号 吉田博人著より。
 ※ 私も 大切なお友だちなどに、こけしあげました。「お嫁に出しました」惜しい!

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