疎開先の鳴子の旅館の立ち並ぶ温泉旅館は全て学童達で溢れていました。街のあちこちに店があり、木の人形が並んでいたのです、こけしと言う名前を知り興味を覚えた記憶がありありと思いだします。
一年近く鳴子での生活でしたが、こけしを手にすることは適いませんでした。これが私にとって始めてこけしに出会った時と場所です。
その後、昭和36年頃にある場所で偶然こけしを見たのです。胴が少し反り返っているあの形です。「鳴子こけしだ」と思いました。頭の中には走馬灯のように昔の思い出がくるくると回るのが消えませんでした。
鳴子、思い出深いその町。私にとって鳴子こけしが原点なのですが、その後は「こけしガイド」を手にしての蒐集活動が始まり「こけし友の会」にも参加させて頂きました。
当時は今のように中古品はありませんでしたので、新品が入札品だけで、サイフと相談しての入札に参加するのが大きな楽しみでした。
今、津軽系に人気が集まっているようですが、こけしの楽しみは各系統の中から良いものを選ぶ楽しみがある訳なのに、これを失ってほしくないと思います。もう少し幅広く見つめ直して、こけしの美を求めて欲しいのです。今人気のないこけしも必ず見直され、あの時に求めておけば良かったとの思いをする時があったのを、時代の流れの中で思い出として私の中に残っています。
又、現在大寸物に人気が無いようですが、こういう時こそ求めるチャンスなのです。時代の流れの中で見逃さずに求める事が、将来悔いを残さない蒐集の時と思います。
こけし文化を長く育てる意味でも多くの方達が幅広くこけしを愛して侮らない蒐集をしてほしいと思います。(平成26年記)以上。こけし友の会々員・麻生修氏著より。