平成に代わる新しい元号が「令和」と決まった。
発表のスタイルは、平成を「踏襲」した。菅義偉官房長官が新元号の書かれた額を恭しく掲げる。前回は昭和天皇が崩御した直後の発表。「平成おじさん」と後に呼ばれた小渕恵三さんは、黒ネクタイの喪服姿だった。憲政初の事前公表となった今回は、やはり「空気感」が違った。
改元があっても時代が急に変わるわけではない。それでも日本人は元号に特別な思いを抱く。応仁の乱や享保の改革といった歴史上の事案を元号で認識し、昭和一桁や、平成の怪物などと口にする。確かに独特の時代のつかみやすさがある。
1300年以上続く元号。けれど庶民に定着したのは150年前の明治時代から。江戸時代以前は、頻繁に代わる元号は不便で、干支を使うことが多かった(山本博文著『元号』悟空出版)。有史以来、元号との関わりが深まっている現代人である。「へいせい」から「れいわ」と柔らかな響きの日本語が続いていく。
その名が新たな時代を体現できるよう、言霊の力を信じたい。
※現存する国内最古の歌集「万葉集」の「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、、」から引用したという。「美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」との希望を込めた。昭和世代の人は「和」の文字の再登板に、驚きや感慨があったかもしれない。 以上、愛媛新聞『地軸』より。