鹿間時夫・中屋惣舜著『こけし・美と系譜』より。(久松保夫氏邸内)
久松氏の木偶坊は尼崎の米浪庄弌氏邸内のおけし園とともに、東西の二大収集といわれ、質量ともに優れている。この部屋は久松氏が新居に移られた時、こけし部屋用に設計された。自在鉤の奥に黒く見えるのは、昔の二人挽ろくろ。その上の棚は土湯系、右は弥治郎系と遠刈田系のコーナー。大寸物に久四郎・直助・周助・丑蔵・忠蔵などが見える。向かって右手前に入り口があり、写真に見えないが左手の壁も手前の壁も一面こけし棚で、系統別にしまわれている。上京した工人達がよく見学勉強に訪ねてくるし、私達こけし党の梁山伯にもなっていて、この部屋でこけし談に華が咲くのである。
※久松保夫(1919年~1982年)氏は、こけしをはじめとする伝統玩具の蒐集家としても有名で、1974年に設立された同好会「こけしの会」の同人で、亡くなるまでつとめる。また俳優・声優でもあった。