『武井武雄のこけし』より。
肘折系こけし工人・中島正(明治40年~昭和60年、享年、78歳)のこけし。
「何となく大仏めいてクラシックな匂いがあり肘折での親玉」と『日本郷土玩具』に、さらに「頭も桐材で古色光澤極めてよく、素朴放な太い筆使いの中に掬すべき優しさがあり、ぶっきら棒な三階菊模様など全く遠刈田系中類例のない逸品です。(中略)全こけし中屈指のものと思って居ります」と「こけし通信」でも絶賛しています。形態、表情ともに堂々として、迫力に満ちています。以上。
※ 中島正工人は、幼児両親に死別し、肘折に行き、15歳のとき佐藤周助の弟子になって木地を習得した。三日月型の目と丸く見張ったような大きな目の二とおりのこけしを作る。目の大きなほうは、肘折時代に工夫したもので、当時よく売れたのでたくさん作ったといわれ、残っているものも目の大きいほうが多い。肘折時代の三日月型の目のこけしはごく僅かしか残っていないが、全こけし中屈指の名品で、師匠の周助の作品より高く評価する人もいるほどであった。