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Channel: こけしおばちゃん
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こけしの風土 ④

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 こけしは簡単直截で人形としては極めて静的な機械的なものである。土人形や張子人形のような服飾・動作の優美な線は見られない。しかし、体格・動作・服飾に表現が分散されることはなく、表現のすべては顔に集中され、特に目鼻に重点が凝集する。胴は顔をひきたたせるためにあるにすぎない。分散でなく集中、複雑でなく単純である。いわば俳句の人形である。生の人間の写実的なミニアアチュールではない。それは完全に抽象的なシンボリックなものである。こけしの生命は顔であり表情である。こけしは表情の人形であり表情の芸術である。それは、こけしをつくる工人の生活感情の率直な反映にほかならない。工人生活史のある時点の投影でもある。木をろくろにかけて、けずるという点では、陶工の作る壷や茶碗の造形と似た工芸的性格を持っている。
 ※ 熊本の「べんた人形」のような木彫人形は、刀の切れによるが、木地師の鉋やバンガキは円い棒状体を仕立てるために働きこそすれ、みだらな刀痕は残さない。しかも丹念に磨き上げてしまう。『こけし美と系譜』より。

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