鳴子系利右衛門系列(高勘)の工人が作るこけしに「大正型」がある。この大正型は西田記念館に所蔵されている大正期の高橋盛こけしを「原」として昭和43年秋に遊佐福寿さんが復元したものである。
ところで福寿さんの昭和44年作の大正型に胴中央の添え葉が左右それぞれ対になっていて、他の時期の大正型とは様式が異なる。「古計志加々美(原色版)」には同様式の盛こけしが掲載されており、44年の福寿大正型はこれを見て作ったものと推測される。
「加々美」では単色版で西田大正型はを、そして原色版ではもう一本別の大正型を掲載していたのである。
一昨年の秋のある日、ネットオークションを見ていると古そうな大正型こけしが出品されていた。胴の底書きから昭和15年入手とある。まさか加々美の現品とは思わなかったが、掲載写真の胴模様を子細に検討してみると同じものと思われた。勘治のこけしは別としても、盛の大正期のこけしが出てくることは希有であり、このこけしを入手出来たことは幸運の一言に尽きる。なお大正期の盛こけしの胴模様は独特のものであり、この手のものは、本品(加々美原色版)、西田蔵品(加々美単色版)、橘蔵品(古作図譜)の三点しか確認あされていない。
このこけしの写しを柿澤是隆さんにお願いした。写真△榔Δ今回のギャラリー用、左は昨年の名古屋こけし会頒布品(黄胴)、写真,慮局覆噺比べて頂きたい。太目の胴、ふっくらとした頬に優しい眼差し、豊かな時代を象徴した大正型である。
原品との雰囲気の違いは、もう時代の差としか言えないものなのであろう。以上。
『こけし手帖』平成21年4月号 579号「例会ギャラリー」国府田恵一氏著より。