『こけし手帖』平成21年5月号 580号。
今回ご紹介するのは二本の佐藤松之進である。
右は尺、左は8寸5分である。やや縦長の大きめの頭に、中央がやや膨らんだ胴の堂々やる量感のあるフォルム。眉と目のアクセントが出た鋭い面描。力強いこけしと思う。4段の大振りの重ね菊の胴模様の上下を紫のロクロ線が締めている。下部のロクロ線は胴の最下端、畳み付きに接するようにひかれている。面取りは大きく、底はのこぎり挽きである。裏模様として、右では赤の、左では紫のアヤメが描かれている、
また、右の胴底には小室の、左の胴底には佐藤松之助(松之進の戸籍名)の記入がある。右は正末昭初、左は大正期と思われるのだが、その時点での収集家の工人の名義に関する認識を表しているようで興味深い。以上。「例会ギャラリー」鈴木康郎氏著より。