『こけし手帖』平成22年12月号・599号「例会ギャラリー」より。
当会会員の軸原ヨウスケ氏企画による「kokesi book」の発刊来、オールドファンから若者へ間口が広がり、鳴子やこけしを扱う店そして当例会にも若い方が多く集うようになった。又、若手工人の活躍が目立ち、本当にうれしい限りであります。
今月のギャラリーは、表題の芳雄工人の入れ子こけしを取り上げた。芳雄は昭和10年1月15日福島に生を受け、土湯系の名門湊屋の跡取りとして祖父由吉、父芳衛につき木地を習う。但し、こけしは作らず、木工施盤を用い木型や造船材を挽いた。昭和32年5月父の死後、祖父由吉の木地を挽く。若干のこけしを制作するに留まり、48年頃から製作を再開し、平成8年5月死去する迄製作を続ける。祖父と同様に坊主・髯・傘やガラ入り・孫持ちと細工物を好み、作柄は父芳衛に似ている。
本日持参の物は、平成18年当会による芳衛工人の弟・秀夫氏の所蔵品の入札時に入手したもので、傘こけしの入れ子と云う技へのこだわりに惹かれたものである。
写真は由吉型の傘地蔵、曾孫持ちである。右から親尺1寸、胴径3.6寸、傘径4.3寸。子7.5寸。孫4寸。
曾孫2.2寸。傘にはロクロ模様と外側は、たっぷりと付けられた染料をロクロの遠心力で飛ばした祖父譲りの技法が凝らされている。
画描も尾鰭の様な前髪、カセはマテで精緻を極め、眉目は細く軽く描かれ、鼻は幅広の垂れ鼻、紅の引かれた口許と相俟って微かに微笑んでいる。胴模様は赤、黄、緑、黒のロクロ模様と電光、波線、半渦巻きと美麗な衣裳を纏っている。
最近、当例会でも芳雄作を見掛ける様になった。湊屋直系の木地、こけしへの拘りを楽しんで戴ければと思う。以上。「例会ギャラリー」こけし友の会・平塚俊夫氏著。