『こけし手帖』平成23年3月号 602号「例会ギャラリー」より。
今年の新年例会の招待工人は佐藤英之・裕介の両工人。それにちなんで今回のギャラリーでは佐藤一家にゆかりの工人の古品を取り上げた、
先ず、佐藤誠。久松保夫氏の旧蔵で「こけしの世界」では大正後期弥治郎時代の作としている。大きな頭に華麗なロクロ線が見所。両工人の祖父の古作である。
次に小倉嘉三郎。右は丹羽義一氏旧蔵、鼓童コレクションの昭和4年作と特徴が似ている。左は米浪庄弌氏の旧蔵。右より古いように思う。二本とも面描は慎重、色調はやや淡く、ごく初期の嘉三郎の特徴を持っている。嘉三郎は誠の師匠である。
続いて高橋精助、これも米浪氏の旧蔵で、ガラ入りである。復活期の昭和14年作と思われる。伸びやかな面描の線が好ましい。精助は嘉三郎の弟で高橋家に婿養子に入った。
最後は大野栄治、7寸。友の会入札に出たものである。優しい表情で素朴な感じである。弥治郎時代、栄治としては最も古い作の一本ではないだろうか。栄治は誠の弟弟子で嘉三郎の娘と結婚している。
佐藤一家が写しを作る四人の工人の古作を紹介した。慣例により文中工人の敬称は略した。
写真の右より 佐藤誠(尺1寸6分)
小倉嘉三郎 2本(尺。8寸3分)
高橋精助(尺3寸)
大野栄治(7寸)
以上。「例会ギャラリー」こけし友の会・鈴木康郎氏著より。