『こけし手帖』平成23年6月号 605号「例会ギャラリー」より。
今回は、日本全体元気がないので、眺めることで元気が出て、思わず微笑みが出て癒されて、時期的に桜見物をしてもらおうと取り上げました。
右のこけしは、肘折の奥山喜代治と思われる。山形の愛好家の旧蔵品で戦後すぐ、この状態で肘折の川沿いの家で譲ってもらったとのこと。
その後私が譲り受けたが、昭和16~18年頃蒐集家の要望に喜代治が、鈴木幸之助木地で作ったものと思われる。ユーモラスでグロテスク。独特の情味があり、前髪、目、口元、鬢の描き方に特徴があり描彩が、総体的に太く、眺めていると、素朴で微笑みかけてくれて思わず口元がゆるみ、体の中で何かがはじける気がするこけしである。特に石竹(撫子)の模様は,古い物でも数が少ない。
左のこけしは、鳴子の大沼健伍です。これから桜の季節であり、珍しい桜模様のこけしです。昭和54年鳴子を訪れ、細胴の作り付けこけしと、この非売の胴模様「重ね桜」を無理に譲ってもらいました。
満開の桜が、少しでも、気分を和らげてもらえれば、と思い選びだしました。今回の災害でも、被災地で海水に浸り折れても花をつけて、元気に咲いています。入手時「俺のこけしは表情が今一つ、せめて胴模様には賑やかさを…と思って、この模様は、昭和40年代に10本位作ったかなぁ」と言っておられました。
確かに、その後この模様は見ていませんでしたが、3年ほど前に例会中古頒布で7寸が、出ましたのでどなたかがお持ちだと思います。これらのこけしを見て、元気になってもらえればと思います。以上。
こけし友の会・吉田博人氏著より。