『こけし手帖』平成23年7月号 606号「例会ギャラリー」より。
こけしの胴模様には花やロクロ線が多いが中には蝶やトンボ等の模様が追加される事があります。良く知られた蝶模様は鳴子系の大沼岩蔵・弥治郎系の佐藤春二・木地山系の小椋米吉工人とそれを継承するこけしに見られます。岩蔵工人はこけし製作を復活した昭和13年頃より菊と蝶を胴模様に描彩しています。
写真,留Δ蓮⊂赦14年頃中山平の岩蔵工人8.2寸です。保存が悪く蝶が描彩されていたか判明出来ませんが、古鳴子を思わせる大きなかぶら頭・肩が低く・一筆目に眼点・鼻は二筆で素朴なこけしです。
右二番目は桜井昭二工人・三番目は昭寛工人の岩蔵型です。昭二工人の弟子で五十嵐勇・吉田勝範工人の岩蔵型にも蝶が描彩されます。
佐藤春二工人も熱塩でこけしを製作していた戦前より胴に蝶を描彩しています。春二工人に指導を受けた工人やその型を継承する工人のこけしに蝶の描彩を見る事が出来ます。
小椋米吉工人が戦前の旭川での約6年間に蝶模様を描彩したこけしが、西田記念館の西田コレクションに見る事が出来ます。
阿部平四郎工人が米吉型を復元する時に元会長の西田峯吉氏が米吉こけしを貸し与えたと聞いていますので其のこけしと思われます。その後、全日本こけしコンクール第39回で内閣総理大臣賞を受賞したこけしにも蝶が見られるので原に蝶が描彩されていたものと思われます。
写真△賄敕魴呂療亙嫦虱差人のこけしです。右(5.3寸)は頭頂に二匹の蝶が描彩されたこけしです。他のこけしはトンボと蝶が胴模様として描彩されたこけしです。土湯系の他のこけしに蝶の模様を見る事は無いので忠雄工人の創作ではないでしょうか。どれも見て楽しいこけしで忠雄工人の遊び心が感じられます。以上。こけし友の会・田中厚志氏著より。