こけし会としては最も会員数が多く、中心的に活躍されておる東京こけし友の会の皆さんの選んだ「私の好きな戦後のこけし」展にどんなこけしが出品されているかは、こけしに関する情報の少ない地方在住者として大いに興味を感じるところであった。展示されたこけしに関する内容については既に言及されている方がおられようから、ここでは単純に数学的に眺めた結果を述べたい。
本こけし展に出品された方の総数は74名、出品されたこけし本数は341本であり、選ばれた工人数は149名であった。
戦後活躍した工人数を明確に知る資料が見当足らないので「東北のこけし」の工人名簿から昭和20年までに逝去した工人並びに逝去年の不明な工人を除外したものとした。
好きな工人として選ばれた149人の系統別内訳は、鳴子系30人、土湯系29人、遠刈田系21人と続く。系統別に総工人数が異なるので、系統別に好きとして選ばれた工人の割合を調べると、土湯系30.6%、弥治郎系26.2%、山形系21.8%と続く。両者の順位の違いはこけしを系統より工人で選ぶ傾向の現れと思われ、系統別では好まれる上位の順位はつけ難いと感じた。
次に出品者側から見ると、土湯系を好きと選んだ出品者は41人(出品者の55%)、次いで津軽と鳴子が29人(39%)と続いている。
次に工人別に選ばれた本数を調べてみた。最も選ばれたのは佐藤文吉16本、次いで井上ゆき子14本、野地忠男13本、今晃12本と、4工人が際立っている。佐藤文吉を選んだ出品者は11人(出品者の15%)、井上ゆき子、今晃を選んだのは各8人(11%)である。なお、3本選ばれた工人数は19人、2本選ばれた工人数は21人、1本選ばれた工人数は83人であった。
以上の結果から、好かれている系統、好かれている工人の凡その実態を知ることが出来る。今回のこけし展からは参考になることが多々あり、これからも同様なこけし展を期待している。
※ 『こけし手帖』より。平成24年7月から9月まで仙台カメイ美術館で開催された「私の好きな戦後のこけし展」高井佐寿氏著より。写真は別です。