こけし随想「こけしの心」(当時は京都府立大学教授)・寿岳章子(1924年~2003年)「こけし・みちのくの旅」より。
昭和18年のこと、当時は東大や京大は女の入学を認めてなかったから、「奥の細道」の東北大学で学んだ。始めのうち「こけし」のことなど考えなかった。しかし、時々遊びに伺った仙台在住の方のお宅には、なにげなくいいこけしが置いてあって、そんなことが、ひとりでに私にこけしを買いたい気持を呼びさましたのではなかろうか。(中断)東北の長く辛い冬も、きっとこけしの誕生に意味を持って、こけしには簡素というものの原型が示されている。丸い頭、細長い胴、手も足もない、しかしダルマとは違う。象徴的であるともいえる形。、、、、、
その人の心には、こけしを育ててきた東北の風土の精神、歴史そのものが確かな足場を得たといえよう。
☆ 寿岳章子(東北大学卒業、京都大学大学院をえて、同大学に助教授、教授を36年間勤めた。)