こけしがいつ誕生したかについては、ほぼ19世紀の始め(江戸時代、文化文政の頃)と考えられている。こけしを作っていた工人は、その昔、木地師とか轆轤師(ろくろし)といわれていた人々で、本来、椀や盆、柄杓などの日用雑器を作っていたのです。
当時の農村には、冬の間を利用して、一年の労働の疲れをいやすために近くの温泉地へ湯治に行くという習慣がありました。そうした湯治場の近くに住む木地師たちは、豊かな木材を利用して、こけしや独楽などの木地玩具を作っては、湯治客相手のみやげ物として売るようになりました。このように子ども向けのおもちゃとして作られたというのが有力とされている。
明治の中頃には、湯治場も盛んになり、こけしの需要も増え始めます。それとともに木地や描彩も精巧になり、こけしは子供の玩具から、大人の趣味や鑑賞にもたえうる工芸品へと発展していきました。