『武井武雄のこけし』より。
蔵王高湯系こけし工人・岡崎長次郎(明治11年~昭和29年、享年77歳)のこけし。
「特別土臭い鄙娘、朴訥なズーズー弁が口をついて出そうな風貌です」と「こけし通信」に書かれているように、ひなびて古風な味がありもす。背景は井桁を散らした絣のようでもあるし、雪の中に佇むあどけない童女のようにもみえます。
※ 岡崎長次郎のこけしは、昭和5年ころ中止する以前の前期・昭和15年より19年までの中期・戦後の後期の三期に分類される。前期の特色は、木地が代助商店の職人によるもので、画描を中心に描彩を長次郎が行っている点にある。代助・久作等長次郎以外の名儀で世に出ていた。
中期の作は戦前の第一期こけしブームと一致して、現存長次郎の最も一般的なもの。オカッパでも前期のものと異なり、髪と鬢が離れている。刈り込みも深く、散髪した直後のようにみえる。
後期の長次郎の作品は、完成度の高い蔵王高湯系にあって「あどけない幼童の表情」を大切に残していた。大井沢の志田菊麻呂もなんらかの形で長次郎の影響をうけていると思われる。以上『こけし辞典』参照。