最後に、こけし産地とは無関係の関西は大阪市という、大都会の繁華街に立つこけし像を紹介をしよう。以前から民芸風小料理屋入口に立つこけし像を紹介する。
これは料理屋入口で時に見掛ける陶製のネコやタヌキに相当するもので、招きこけしとでも言うべく、先きに紹介した白石市のうーめん屋入口のこけし像と同様だが、関西は大阪市という大都会に立つところに、妙味があると言えるだろう。
これを見るとこけしに関心ある者は、経営者が宮城県人かと想像するだろうが、女主人が秋田県人と聞いて、それでは何故鳴子系こけし像を、と疑うはず。
しかしこけしの系統にこだわることもなく、ネコかタヌキ以外のものに、目新しい客寄せの縁起物をと考えた女主人の発案で、こけしと言えば、故郷秋田県の木地山系よりも、関西人にも馴染みが深い鳴子系を置いたと思えばよいだろう。
そして、大阪市内のこんなところに、とびっくりしながら、まずは店内に吸い込まれた私のことを思ってもらえば、こけし狂い?にとっては、招きネコやタヌキ以上の効果が十分といえるのではないだろうか。店内の棚には、僅かながら各系統のこけしが並び、のれんもこけし絵なら、マッチにもこけし描彩があるという凝りようである。
それでは置いている日本酒は、招きこけし像に関連して、宮城県は仙台の天江酒造「こけしうま酒」かと思いの外、「高清水」、「太平山」、「新政」が並んでいるのは、やはり秋田県人の店である。
吞ん兵衛のこけし像巡りは、とうとう最後に、大阪市内の街角の小料理屋に案内することになったが、各地へのお付き合いを感謝し、こけし像巡りの旅を終わることにしよう。
「こけし手帖」275号『ちょっと横道・こけし像巡り』 深瀬 秀著より。
※ 今でもその小料理屋があれば、行ってみたいものです。