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Channel: こけしおばちゃん
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続・こけしのある部屋

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 「朏健之助さんをお訪ねして」昭和60年5月発行の「こけし手帖」より。
 「朏」と書いて「ミカヅキ」と読む。京都の電話帳の中で朏という家を探すとわずか3軒しかなく、誠に珍しく一度覚えたら忘れない名字である。
 しかし名字ばかりかスケールの大きい人柄は、会う人に深い印象を与える。ひとくちに収集といっても、けたが違う。今から8年前の昭和52年に古稀を祝い、記念に主婦の友社より『伝統と郷土玩具』を出版した。その本の前文を引用した。「朏コレクションは、朏健之助氏(1908)の収集人形、玩具約1万2千点をいう。ほとんど戦前のもので、なお収集品は日本だけでなく朝鮮半島、中国大陸、東南アジアにまで及んでいるのが特徴である。戦後、収集品の保存をよくし、民俗学的な研究資料に供する目的で昭和39、49年の二度にわたって、京都府立総合資料館に寄贈された、、、」
 五条通りから若宮通りを上がると、すぐに西側の家並みに可愛い立て看板「浪速商会」が目につく。朏さんの住いである。瓦ぶき二階屋が軒を並べて狭い通りの両側に続くさまは、まさに京の町家である。
 二階の和室八畳の客間に通されると、飾り棚に菅原庄七、鈴木幸之助の戦前ものが数本置かれていた。今なお海外旅行に意欲的なだけに、気持ちも若く、話題豊富、気さくな応対に筆者の気持ちはたちまちに弾む。
 こけしについては、昭和30年以降のものより、それ以前のこけしに面白さを感じるという。昭和58年に京都府立総合資料館で朏コレクションのこけし展を催したが、出品した198点は、昭和初期から第二次大戦までに収集したものである。
 朏さんはこけしだけに限定せず、郷土人形の一つとしてこけしを楽しんでいる。
 地元伏見の酒をこよなく愛す朏さんは、飲むほどに濃のある玩遊談へと進み、聞くものの心を酔わす。如月洛中深更にいたる。以上。

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