こけしの保存について土橋慶三氏は(事典)(伝統こけしポケットガイド)に知っておくべきこととして、二つをあげている。それは、こけしの材料である木地の性質を知ること、こけしの顔や胴摸様を描くために使っている染料の性質を知っておくこと、と書いている。
別の書物に、こけし愛好家は入手したからには、そのこけしの保存について責任を持つべきであると書いてあるのを見たことがある。新品は勿論、中古や古品を入手した時も全て同様に、それ以降のこけしの身上を守るべきであろう。
だからといって、入手して直ぐ仕舞い込んでしまうのでは、何のために収集しているかわからない。こけしはこけし愛好家にとっては、鑑賞のための入手だからである。
まず、最初の木地の性質であるが乾燥が十分であるかどうか、こけしのよっては暖房のある所に置いたりすると、急激に水分が蒸発して割れることがあり、また落下によるキズやカビにも注意が必要である。
次に染料であるが、一番弱いのが紫で、黄、青、赤、墨の順で、墨が一番最後まで残っているとされている。
退色を防ぐには、太陽光と蛍光灯を極力避ける必要がある。私の場合、入手したこけしはできるだけ蝋を拭き取って、数か月は見える所に出しておく。そして場合を見はからって茶箱やダンボールに仕舞っている。仕舞い込んだこけしは出しているこけしと交替したり、梅雨明けなど定期的に出して拭くようにしている。
写真は、私の数少ない古品の中から最も保存の良いこけしである佐藤雅雄のこけしを見て頂く。このこけしは紫、黄に加えて、赤ではなくピンクが使われている。そのいずれの色も全く褐色にしていないのは驚きである。このこけしは、いったいどんな道を辿ったのだろうか。以上。
『こけし手帖』545号 小川一雄氏著より。
※ 我が家のこけしは、恥ずかしいが、全て部屋の棚に並べ、一日中、並べて鑑賞している。私の一番幸せの時間である。